神奈川を巡る観光の旅~「開高健記念館」と中村創~

 中村創は、神奈川県茅ケ崎市にある、「開高健記念館」を訪れた。  「開高健記念館」は、開高健が晩年のほとんどを過ごした建物である。昭和の時代からあるそれは、周囲の環境に溶け込んでいながら、どこか凛とした佇まいに魅力を感じた。  開高健は、大阪出身の小説家である。世に残された傑作の数々は枚挙がない。常設展では、開高の同人時代の作品から、作家として活動を開始した昭和30年代からの原稿や記念品、開高の写真などが展示されている。  小説のほかにも、ルポタージュやエッセイ執筆など幅広い分野で活躍した開高健。企画展では、開高健の様々な一面にスポットを当てながら、テーマを構成して紹介されていた。中村創が観光した際は、開高健ノンフィクションの原点を探るもので、非常に興味深いものであった。  中村創の他にも、何名かの観光客の姿があった。開高健が実際に使っていた書斎に足を踏み入れる。愛用の万年筆に思いを走らせる開高の当時の様子がありありと映し出されているように感じた。同じように思ったであろう他の観光客も、熱心に資料などに目を向けていた。  開高が自らそう呼んだ哲学者の小径。当時編集者たちがここを通り、開高と作品について熱く語り合ったといわれている。そこを見つめた中村創は、今にもあの階段の奥から、開高健がパイプをくゆらせながら現れそうな、そんな錯覚に陥ったのであった。  茅ヶ崎市美術館は、茅ヶ崎駅からサザンビーチ方向へ徒歩7、8分の場所にあります。 中村創の場合は観光というよりは、ゴールデンウイークに海釣りに行った際に、急に雨が降り出したために予定を変更して、この美術館を訪れました。 ここには常設展示されている絵画や彫刻作品も多いのですが、期間限定の展覧会が年に何度か開催されており、中村創が訪問した時も「絵師たちの視線」というテーマで近代日本風景画の展示会が開催されていました。どの風景画も絶品でした。 また、静かな館内やエントランスホールでは、時々、無料のコンサートも開かれるということで、今度行く時はホームページをチェックしてから行く事にします。 茅ヶ崎市美術館の建物は2階建ての大きくはなく、個人の別荘を連想させるような美術館ですが、2階からは海も見えるし、晴れた日には富士山も眺められるということで、中村創が行った日は雨が降ったりやんだりの天気でしたので残念でした。 観光の方にも、近くに住む方にも隠れた穴場的な美術館としてお薦めしたいです。  中村創は、神奈川県中郡二宮町にある「徳富蘇峰記念館」を観光してきた。徳富蘇峰とは、明治から昭和にかけて活躍したジャーナリストである。  恥ずかしい話だが、中村創は徳富蘇峰という人物の名前は聞いたことがあるくらいの印象しかなかった。しかし、地元民の憩いの場所としてにぎわいを見せるその館の佇まいに興味を持ち、一度観光してみようという気分になったのだ。  中に入ると、しんとした静けさの中に、徳富蘇峰とゆかりのある様々なものたちが、100年以上経った今でも存在感を放っていた。  記念館には、蘇峰に関する図書が約1万冊が保存されており、蘇峰の著作も閲覧できるようになっている。その他、遺品である特徴的なメガネや、原稿草稿などもあり、当時の様子をうかがい知ることができる。  また、蘇峰にあてられた書簡が約4万6千通保存されている。差出人は、明治・大正・昭和期にかけての各界の要人や作家達であり、その数はおよそ1万2千人。今も昔も、ジャーナリストにとって命に等しいであろう情報が、こんなにも蘇峰のもとに残っていることは、先人達が蘇峰を深く信頼した証といえるだろう。  有名な花の名所で知られる「徳富蘇峰記念館」。記念館の庭園は、美しい花々が季節ごとに彩りを添える。その中に、印象的な梅の木があった。地元の人々にも愛されているその梅の木も、寒さを堪えて春を待っているかのように見えた。